こんにちはテント1

#こんにちはテント (1)
  • やったー。なんだかうれしい。うれしい。フウセンを6個テントにつける。少し夢のようで、少しウソくさくて、まるで灰塚の新築した家みたいだな、と思う。灰塚では、昔の家と新築した家が別々になっているけど、「ここ」では一緒になってるな、と思う。そう思う。
  • 「こんにちは」と書くつもりだったけど、風船つけただけでも、「こんにちは」っていう感じだよな、と思う。あと、風船は、テントに直接つけるのではなく、ヒモをつけたほうが、ずっと簡単だなと思う。そうすれば自転車に風船をつける事もできる。それは、島袋君の乗っていた自転車に似ているなぁと思う。
こんにちはテント 風船
少し夢のようで、少しウソくさくて、・・・ 朝、起きると、テントのポールが折れていた。
  • セミの声を聞く(テントの中)。
  • 夜1時頃テントに戻る。寺の階段は、徐々に薄暗くなり、まっくらになる。少しこわい感じがした。虫の声をきく。おやすみなさい。
  • 朝、起きると(9時半)、テントのポールが折れていた。ガムテープで補修したが、いつまでもつのか不安だ。
  • 昼寝した。4時頃暑くて、起きた。
  • 風船は1日たつとしぼんでしまう。新たにふくらます。しぼんだ風船はとても情けないので、すこし情けないテントになった。 雲
  • 近所の店や電柱などに数枚ビラをはる。春田商店へ寄ってみる。おじさんが「わしは、こんにちは店頭だ」と言う。
  • 空にいろんな雲があった。雲が好きなサイトウさんの事を思いながら、スケッチした。雲を描くのはムズカシイなぁ。上の方の雲を描いていてふと下の方へ視線をおとした時、ワァーと思った。ワァーと口に出した。突然の夕焼け。いっぱいのイチゴを牛乳の中で一度につぶしたような夕焼けだった。あわててカメラを取りに行って、写真をとった。それから、スケッチを続けながら、ずっと空を見てた。色がとけるように弱まってきて、それは、サイトウさんのやさしい感じに似ていた。それから、また急に、赤くなって、しばらく続いて、夕焼けは終わろうとしている。もう、ペン先が見えない。



おばさん こんにちは
  • 朝10時頃、ボーとしていると、テントの前をおばさんが通りかかる。はじめての「こんにちは」だ。東京から来たと言ったら、ひどく驚いていた。畑へ行く途中で何回かテントを見たらしくて、夜、雨が降らないか心配してくれていたらしい。

トマト



こんにちは
おじさん
  • 畑へ行く途中のおじさんに「こんにちは」と言われた。東京から来たというと、やはり驚いていた。畑の方を指して「あそこにおるけん、話に来んしゃい」と言ってくれた。
  • おじさんを探してウロウロする。白菜の苗を写していると、そこの家のおばさん(というには少し若い)が出てくる。ぼくが、テントを張っているところは、昔は子供会がよくキャンプをしていたらしい。このスケッチブックを見てもらう。アースワークは「何しておるんじゃろぅ?」という感じだそうだ。
  • 食事に呼ばれた。ソーメンとトウガラシの葉の油炒め、醤油ニンニクをごちそうになる。あと、ビールも。
ソーメン
ソーメンとトウガラシの葉の油炒め、醤油ニンニクをごちそうになる。
  • こんな怖い話を聞いた。ぼくがテントを張っているところに建っていた法福寺は、めくらの坊さんが住職をしていたそうだ。あるとき、坊さんの失火で寺は焼け、坊さんも焼け死んだのだという。50年も昔の話である。昨日は夜遅くテントに戻ったのだが、女の泣くような、泣き叫ぶような声や、最初自分の鼻息かと思った程近くで聞こえる荒い息の音で、悪寒がして、しばらくねむれなかった。家のおばあさんも、昨日ハァハァする音がした、おじいさんの寝息かと思ったけどそうではなかった、と言っていた。

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